悪女

久しぶりに川端作品を読み始めた。本のタイトルは「美しさと哀しみと」。まだ読み始めたとこなので、どのような展開に話が流れていくかわからないが、川端独特の陰鬱で背徳的な雰囲気がこの作品にもこめられていていい。

 
 この作品にけい子と言う女性が登場する。話の筋やこの女性と主人公大木との関係をここで一々詳述するのは面倒くさいので書かないが、このけい子という女は、魔性の女として描かれている。このけい子の悪女っぷりが好きだ。

 
 思えば悪女にはまり、その陶酔の中で破滅するのはある意味男にとって憧れなのかもしれない。自分が谷崎作品に魅了され共感するのもそのためかもしれない。しかしも悪女は人を選ぶ。文学作品上で悪女が破滅に導くのは、知性にあふれ将来が嘱望されている若者、もしくは富と名声を築きあげた男達が殆どである。才も富も器量もない男は道端の石ころ同然見向きもされない。だから自分のような詰まらん人間はよけいに惹かれるのかもしれない。

 
 しかし同時に川端作品のように陶酔を許さない、全てを達観して美を追求するような作風にはもっと惹かれる。川端作品の主人公たちは、谷崎作品とは違って、女に惑溺して破滅したりしない。自己陶酔や破滅のねっちこさはあまり感じない。そこにあるのは陶酔を許さない愛ではないだろうか。自分はこれに惹かれる。

 
昨日今日と気色の悪い文章が続く。明日から気分転換に北斗の拳でも読み直そう。